もくじ

鮭児とは?

鮭児はケイジと読みます。聞いたことはあっても、見たことも食べた経験もないという方は多いでしょう。11月上旬から中旬にかけて北海道の知床から網走にかけて獲れる鮭の中で、1万匹に1,2匹しか獲れないことから幻の鮭と呼ばれています。 普通の鮭は日本の川で生まれ、産卵のために生まれ育った川に戻ってくるところを捕獲されますが、鮭児は水産庁の遺伝子検査により、アムール川で生まれたシロザケと判明しました。生まれ育ったアムール川を出立し、まだまだ育つために餌を求めて日本近海を泳いでいた時、運悪く捕獲されてしまった、まだ若い鮭なのです。そのため、卵巣も精巣も未発達で、栄養を摂っている最中ですから脂がのり、脂肪率が通常の鮭が15%以下なのに対し、鮭児は20~30%もあります。 そのため全身トロと言われ、1尾のお値段は7万円からとなっています。

鮭児の見分け方は?

鮭児は素人には見分けはつかないと思ったほうが良いでしょう。普通の鮭と並べて比べてみれば、鮭児は身体が小さめで、他の鮭が3kg~6kgであるのに対し、0.5kg~2kg台が中心ですから予想はつきます。顔が胴体に対して小さめだとか、ウロコが銀色に輝き、剥げている部分があるとか、見分け方もいろいろと言われますが、プロならともかく一般の消費者には判別がつきません。 正確に鮭児を見分けるには、お腹を裂いて胃袋の下側についている幽門垂という消化管の数を調べ、その数が220個程度あれば鮭児です。鮭児はまだ若いため卵巣、精巣が未成熟で白子(精巣)や筋子(卵巣)がないものも多いのですが、大きい鮭児だとそれらが備わっている場合もあり、白子や筋子があるから鮭児でないとは言い切れません。 そこで、知床羅臼産の鮭児には、羅臼漁業協同組合の「鮭児タグ」と呼ばれる認定バッジと通しナンバーの振られた証明書を1匹づつ付けることになっています。私たち消費者はこのタグを目安にする、もしくは信頼できる業者から購入することでしか、鮭児は手に入れられないと思った方が良いでしょう。



鮭児とトキシラズの違いについて

一般的に鮭の旬は秋ですね。 普通に出回る鮭は、秋の産卵期に生まれ故郷の日本の川へ遡上してきたところを捕獲するので、体も大きく成熟しています。 鮭児はラムール川で生まれ、秋になり日本近海を遊泳中に捕獲された、まだまだ未成熟な若いシロザケです。産卵期は1年半も先なので、体は0.5kg~2kg台と小さく、その代り通常の2倍以上脂がのっています。 そして、産卵期と違う時期、つまり5~7月頃に捕獲された鮭を、「季節外れ・時期を間違えた鮭」と言う意味で「時知らず=トキシラズ」と呼びます。 トキシラズは産卵期を半年後に控えているので、それなりに大きく3kg以上の大きさがあり、脂肪も蓄えていますが、鮭児ほどの脂肪率ではありません。 但し、旬ではないためと、脂がのっていることからトキシラズも珍重されています。

鮭児のルイベについて

ルイベはアイヌの伝統的な食文化です。 鮭をいったん凍らせることで、アニサキスのような寄生虫を殺し、安全に食べることができるのです。アイヌの人たちが食べる時には、マキリという小刀で大まかに切り分け、ヤナギの串に刺して火にあぶって解かし、少量の塩で味をつけたとか。 鮭児で作るルイベは一度凍らせたものが解凍される段階で水分と一緒に脂が落ち、鮭児の味がより凝縮されて味わえるのだそう。 アイヌに習って塩で食べても、ワサビ醤油で食べても美味です。 今、海水魚の養殖用水槽と農作物を育てるプランターを繋げて、魚の排泄物に由来するリンや窒素を、そのまま農作物の肥料にする研究がされています。将来、鮭も養殖され、隣で農作物が作られる時代が来るかもしれません。